医薬品配送リーディングカンパニーが目指す
送り状発行システム刷新を起点とした業務変革
旭運輸株式会社

業種: 運輸業・郵便業
対象部署: 総務部、業務課
対象業務: 送り状発行業務
医薬品物流の起点となる「送り状」

旭運輸株式会社
総務部 部長
大村 知也氏
製薬メーカーや医薬品卸から発送された医薬品を、厳格な温度管理・運行管理・衛生管理・セキュリティ管理・文書管理・教育管理などのコンプライアンスを満たしつつ、北海道全域の医療機関へ確実に配送する旭運輸。同社はその使命を担う医薬品物流のエキスパートとして、創業以来60年以上にわたって地域の医療インフラを支えてきた。
同社 業務品質保証課 係長の岩田和貴氏は、「医薬品の輸送で特に細心の注意が求められるのが品質管理です。北海道では冬場になると気温がマイナス20以下に低下する地域もあります。加えて道路への積雪や路面凍結の影響、それに伴うルート変更などによっても輸送が長時間化することもありますが、絶対に医薬品を凍らせることがあってはならず、決められた一定の範囲内の温度を保たなければなりません。そういった地方の特殊性にも対応した輸送の設備や体制の強化を進めてきました」と語る。
こうした医薬品物流の起点となるのが「送り状」である。そこに記載された荷主や宛先、指定日時、条件などの情報に基づいた最適な輸送プランが策定されるほか、各地域でパートナーシップを結んでいる運送会社や倉庫など協力会社の手配、受発注管理、顧客対応などさまざまな業務が回り始まる。
Accessで手づくりした送り状発行システムの属人性が課題に

旭運輸株式会社
業務品質保証課 係長
岩田 和貴氏
医薬品物流に不可欠の送り状を、旭運輸はどんな形で発行しているのかというと、長年にわたり利用してきたのはAccessをベースに内製したシステムである。ただ、このシステムにはさまざまな問題が顕在化していた。総務部 部長の大村知也氏は次のように語る。
「内製したといっても当社内には情報システム部門がないため、比較的ITリテラシーの高い社員が通常業務の中で内製したものです。決して使い勝手は悪くないのですが、問題はシステムに不具合が起こった場合です。たまたまその担当者が休んでいたり、本業で手いっぱいになっていたりすると、どうしても対応が遅れてしまいます。属人化しており、代わりになれる者がまったくいない点を危惧していました」
さらに大きな課題は、同システムがOSに依存していることである。
総務部 主任の石井康喜氏は、「現在、社内のPCはWindows 10で運用しているのですが、サポート終了が2025年10月に迫っているため、近いうちにWindows 11へのアップグレードを予定しています。ただ、アップデートによって現行のAccessは正常に動かなくなるおそれがあり、システムの大幅な改修が予想されました」と語る。
そこで旭運輸が決断したのが、送り状発行システムの刷新である。
「長年の取引のある株式会社リコーに相談したところ紹介されたのが、北海道を地場とするシステム開発ベンダーのシステムマインズ株式会社です。単に新しいシステムを開発するだけでなく、稼働開始後もしっかり伴走サポートしていくという心強い方針を示していただき、システムマインズの提案を採用しました」(大村氏)
月間3万件近い送り状の処理を効率化

旭運輸株式会社
総務部 主任
石井 康喜氏
2024年8月に始動した送り状発行システムの再構築プロジェクトにあたり、システムマインズが提案したのは、SCSKのノーコード開発ツール「CELF」の活用である。
同社 取締役の酒井隆弥氏は、「旭運輸様では既存システムの操作性そのものに不満をもたれているわけではなく、逆に操作性が大きく変わってしまうと業務に支障を及ぼしてしまうおそれがあります。したがって現行のAccessの画面イメージを踏襲したUIを提供することが最適解となります。また、社内PCのWindows 11へのアップグレードの猶予を考慮すると、できる限り短期間でシステム構築を終える必要があります。これらの要件を確実かつ低コストで満たすことができるのがCELFでした」と、その理由を示す。
実際にシステムマインズはプロジェクト開始の3か月後同年11月に新システムの初期バージョンを完成し、旭運輸への納品を終えている。ちなみにCELFで開発したシステムは、Windows OSのバージョンに依存しないため、将来にわたるWindowsのアップグレードにも柔軟に対応できる。
こうして稼働を開始した新システムは、旭運輸の業務に大きな改善をもたらした。
「当社は毎日1000~2000件、月間で3万件近い送り状を処理していますが、旧システムは複数名でアクセスできなかったことから、一人の担当者が専任でその業務をこなしていました。新システムではアクセスの人数制限が解消されたことで、複数の社員が分担して業務にあたることが可能となり、部門全体で負荷分散を図るとともに従来の専任者をより広範な業務の戦力として活用できるようになりました」(岩田氏)

送り状発行システムと基幹システムのデータ連携を目指す

システムマインズ株式会社
取締役
酒井 隆弥氏
新送り状発行システムは単に従来の操作性を踏襲しただけではなく、さまざまな機能強化も図られている。送り状の電子化およびレーザープリンター対応もその一環だ。
「従来の送り状はカーボン紙を用いた計6枚の複写式伝票を打ち抜く必要があり、ドットプリンタを用いていました。当社では以前からこの伝票を電子化し、発荷主や着荷主、協力会社との間もPDFファイルまたはレーザープリンターで出力した伝票でやりとりしたいという思いをもっており、今回のシステム再構築を絶好の機会として捉え、システムマインズにCELFでその機能を実装してもらいました」(大村氏)
実際に複写式伝票からの変更を受け入れてもらえるかどうかは、あくまでも相手先の判断による。このため現在は従来方式との並行運用を行っているのだが、次第に新方式への移行が進むに伴い、旭運輸の業務効率化も進んでいる。
「従来の複写式伝票は手作業で仕分けを行わなければならず、毎日合計で1時間程度を費やしていました。新方式に移行した送り状は、そうした手間が不要となるため、10分程度で処理を終えることができます」(岩田氏)
そして旭運輸は、すでにその先の展開も見据えている。
「電子化された送り状のデータをそのまま受発注管理システムや請求書発行システムなどの基幹システムと連携させることで、さまざまなデータを手作業で再入力している無駄な手間をなくし、業務をさらにスピードアップしたいと考えています」(石井氏)
旭運輸はこの構想を着実に実現していくため、システムマインズおよびその背後に控えるSCSKに対しても、より充実した伴走サポートや提案に期待を寄せている。

企業情報
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