当初から全社展開を視野に入れて導入を計画
業務部門の担当者自らがアプリ開発できる体制をつくる

JSR株式会社

業種: 化学

対象部署: 人材開発部

対象業務: 要員計画

数多くの「メール+Excel+手作業」を効率化し、全社の働き方改革を実現

タイヤなどに使われる合成ゴム分野で国内トップシェアを誇るJSRは、ゴムで培った化学力を活かし、ディスプレイ用パネル、半導体といったゴム以外の分野や、ライフサイエンス分野へ事業を拡大している。また、タイ、ハンガリーなど海外進出にも積極的だ。そんな同社のシステム戦略部は、社内のITシステム活用を企画・推進する部署だ。

JSR株式会社
システム戦略部
主事 大谷 拓也様

「世の中で広まる『働き方改革』への対応もあり、業務効率化を積極的に推進しています。その一つの改善対象として着目したのが、Excelで作成した回答フォーマットをメールで配信し、その回答を収集し、手作業で集計する、といった業務です。この業務は部署を問わず多数行われており、改善できれば大きな効果が生まれます」(JSR株式会社 システム戦略部 主事 大谷 拓也氏)

この課題を解決するにあたり重要な要件としたのが、業務部門の担当者が自らアプリ開発できることだ。「ビジネスのデジタル化の流れの中でシステム部門の役割は増すばかりです。一方、デジタルツールが身近になったいま、業務をいちばん理解している現場担当部門自らが開発するのが合理的だと考えたのです」(大谷氏)

そして、いくつかの製品を比較検討し、選ばれたのがCELF(セルフ)だ。製品選定を行ううえでポイントとなったのが、①アプリ開発の容易さ、②Excelライクなインターフェース、③全社展開に対応できるか、の3点だ。アプリ開発の容易さに関しては、プログラミングの専門知識がない業務部門の担当者でも直感的に開発できるインターフェースや、Excelデータをそのまま利用できるインポート機能などを評価した。また、画面の見た目がExcelライクなのは、実際に利用するユーザーが慣れ親しんでおり、従来のやり方からスムーズに移行できると考えた。さらに、当初から全社展開を想定していたため、さまざまな業務要件に幅広く適応できる柔軟性も評価ポイントとした。

システム戦略部の選定ののち、担当部門主導での導入に着手

JSR株式会社
システム戦略部
主事 高橋 岳大様

業務部門がアプリを開発するのは同社にとって初の試みだった。そこで、システム戦略部がトライアルで数カ月かけて使い勝手を検証したうえで、正式に導入を決定した。

「業務部門が自らアプリ開発をすることは初の試みということもあり、業務部門に活動の趣旨や意義を伝えることに加え、アプリ開発に必要なスキルを習得してもらうには時間がかかるため、長期間の支援が必要だと考えました。そこで、業務部門への十分な支援をするために数部門でのスモールスタートで利用を開始することとしました」(システム戦略部 主事 高橋 岳大氏)

その一つが、人事などを担当する人材開発部だ。実は人材開発部では、給与情報など機密性の高い情報を扱うために、社内のシステム戦略部といえども情報を十分に開示できず、これまでITツールを活用した業務効率化が進んでいなかった。

「人材開発部は働き方改革(JSRでは“ワークスタイルイノベーション”活動)の必要性を社内にアピールすべき部署でもあります。ITツール導入という新しいチャレンジにより、業務効率化を実現しようと考えました。そこで、ツールの導入検討段階からシステム戦略部と協議を重ねていました」(人材開発部人事チームリーダー 柴田 哲志氏)

JSR株式会社
人材開発部
人事チームリーダー
柴田 哲志様

柴田氏のリーダーシップのもと、人材開発部では「要員計画」の業務をシステム戦略部から推薦のあったCELFでアプリ化することを決断した。要員計画とは、各部署から3年先までの要員ニーズを吸い上げるもので、翌年以降の採用人数の決定や異動計画の立案に用いられる。グループ企業を含めた国内外の全部署を対象とし、毎年人材開発部がとりまとめを行っていた。

これまでの要員計画は、Excelで作成したフォーマットをメールで各部門に送信し、その回答もメールで回収を行っていた。個人情報が含まれる情報をメール添付でやり取りするというセキュリティ上の懸念のほか、100を超える部門からの回答を確認・集計する作業の煩雑さ、また各部門でExcelフォーマットが改変された際の修復や申請元との確認に費やす労力など、人材開発部もさることながら依頼している先の部門の負担も小さくないという実態があった。

ユーザー主導でのアプリが完成。
手作業がなくなり人為的なミスも撲滅し効果を実感

JSR株式会社 人材開発部
人事チーム 兼 グローバル人事チーム
平間 ひかり様

要員計画アプリの開発担当者に選ばれたのが、人材開発部人事チーム兼グローバル人事チームの平間 ひかり氏だ。リーダーの柴田氏は、「ITの知識があるから担当にしたわけではなく、これまで要員計画を担当し業務に精通していた実績から選びました」と話す。

平間氏は、これまでアプリ開発の経験が全くなかったが、基本的なフォーマット作成などは独力で進めることができた。ただ、開発や設定が難しい内容に関しては、システム戦略部の高橋氏に指導を受けた。ここでトライアル時に得た高橋氏のノウハウが活かされた。こうして毎週2時間、約3カ月かけて開発が進められ、要員計画アプリの完成にこぎつけた。

「CELFにより、Excel回収後の手作業がなくなり、情報を一元管理できるようになりました。また、メールでのやり取りでは宛名間違いや、他人へのメール転送などによって、本来は閲覧権限がない人にも情報が送られてしまうリスクもありましたが、CELFであれば権限を持った人しか閲覧できない設定ができ、コンプライアンスの面でも安心して運用できます」(平間氏)

全社展開に向けて、
各拠点を回り説明会や相談会、勉強会など支援策を実施

JSRでは、人材開発部などでスタートさせた現場でのアプリ開発を、今後は他の部署に拡大する計画で、すでに3,000ライセンスを導入している。

「最初の段階で、人材開発部が開発したアプリを部長職が利用し、その便利さを実感してもらったことで、全社展開がよりスムーズになると考えています。各部署から、『こんな用途に使えるのでは?』というアイデアを出してもらうことで、業務の効率化を進めていきたいです」と大谷氏は意欲を示す。

システム戦略部では、全社展開を支援するための施策も怠りない。説明会を開催し、各部署で困っていることをリスト化してもらい、それをもとにした個別相談会も開催している。すでに2018年度下半期からは、全国の拠点を回りCELFを活用したアプリ開発に関する説明や教育の機会を設けている。2019年度はさらに拡大して実施中だ。

システム戦略部の全社展開というビジョンのもと、現場トップの働き方改革実現に対する強い想い、業務担当者によるアプリ開発によって地に足のついた業務改革を推進しているJSRの試みは、多くの企業の参考となるだろう。

企業情報

企業名JSR株式会社
業務内容
    1957年に合成ゴムの国産化を目指して日本合成ゴム株式会社として設立。石油化学系事業や情報電子材料を核としたデジタルソリューション事業を展開するほか、近年ではライフサイエンス事業にも進出しています。

導入事例