PCA給与×CELFで作業現場と本社間で作業日報データを共有し
「建設業の2024年問題」に対応した労働時間管理を実現
秋津道路株式会社

業種: 建設業
対象部署: 事務部
対象業務: 工事現場の作業者の労働時間管理
作業員の労務管理が煩雑で、手作業での集計に時間がかかる

秋津道路株式会社
代表取締役社長
渡辺 慶人氏
幹線道路から生活道路などの公共事業を中心とした舗装工事を主事業とする秋津道路。北海道を地場とする同社では、冬季の除排雪業務も請け負っており、積雪がもたらすさまざまな危険から地域の道路の安心・安全を守っている。
そんな同社が「100年企業として存続するためには、時代に合わせて変化し続けていかなければならない」という掛け声のもと、注力しているのがDXである。同社 代表取締役社長の渡辺慶人氏は、「道路建設の現場におけるデジタル化と本社業務のデジタル化に両輪で取り組み、業務変革を推進しています」と語る。
そんな同社では、建設業ならではの煩雑な労務管理に課題を抱えていた。同社 事務部 部長の稲井真哉氏は、「道路工事では伝統的に多くの業務を作業員と呼ばれる契約社員や季節労働者が担っていますが、作業員の給与は月給制の正社員と異なり、時給や日給で支払う必要があります。その計算で利用していたのは、長年にわたり改修を繰り返してきたAccessとExcelをベースとするシステムです」と語る。
同社 事務部で総務と労務を担当している千葉智英子氏が、このように続ける。
「道路工事を行っている現場は常時5か所程度あり、これらの事業所から毎朝FAXで送られてくる数十人分の作業日報から一人ひとりの労働時間を読み取り、手作業でExcelに入力しなければなりません。数字に間違いがあってはならないため慎重な確認が必要で、集計を終えるまでに毎日30分以上、月に直すと毎月10時間を超える時間を費やしていました」
特に煩雑な業務に追われるのは年末調整の計算だ。具体的には同社は作業者に対して月末締めで翌月10日に給与を支払っているため、年末年始休暇明けの短期間でこの処理を終えなければならなかった。
PCAクラウド給与とCELFで構築したUIをAPIで連携

秋津道路株式会社
常務取締役 事務部 部長
稲井 真哉氏
同社が労務管理においてさらなる課題として直面したのは、いわゆる「建設業の2024年問題」である。働き方改革関連法の施行に伴い、作業者の時間外労働の上限が年間360時間(※特別条項付き36協定を労使間で締結した場合は年間720時間)までに厳しく制限され、原則としてこれを超えた労働はできなくなった。
「既存のシステムでは、各作業者の勤怠状況を即座に把握することができない状況で、意図せず時間外労働の上限を超えてしまうリスクがありました」(稲井氏)
もはやAccessやExcelの改修では対応しきれず、同社はこれに代わる新たなソリューションを導入すべく、事務機器の導入などで長年の取引のある株式会社三城に相談を持ち掛けた。そして紹介されたシステム開発ベンダーのシステムマインズ株式会社から提案を受けたのが、SCSKのノーコード開発ツール「CELF」と、ピー・シー・エー株式会社の「PCA給与」の2つのクラウドサービスで構成されたソリューションだ。
システムマインズ 取締役の酒井隆弥氏は、「給与計算の基本ロジック部分をパッケージに任せて、CELFで構築したフレキシブルなUIをAPI連携させることで、お客様の労務管理全般の課題を解決できると考えました」と新システム設計のポイントを示す。
秋津道路は、この提案内容が非常に理にかなった現実解であると受け止め、即座に採用を決定した。
「2024年問題に対応するためには時間的な猶予があまりなく、投資コストも想定の範囲内だったことから、システムマインズの提案を採用することにしました」(渡辺氏)
毎日30分間を要していた労働時間の手入力を完全排除

秋津道路株式会社
事務部
千葉 智英子氏
新システムの導入プロジェクトがキックオフしたのは2022年11月だが、翌12月中旬には一通りの構築作業を完了。しばらく旧システムと並行稼働させた試験運用を行った後、2023年2月末には新システムへの一本化を図り、正式運用を開始することができたのである。
「大きなトラブルはほとんどなく、予想を上回るスピード感で新システムをリリースすることができました」(稲井氏)
PCA給与×CELFによる効果も即座にあらわれている。
「各事業所と本社間のデータ連携が実現されたことで、毎日30分以上を費やしていた労働時間の手入力がなくなり、作業日報を画面上で確認できるようになりました。また新システムのUIは、これまで慣れ親しんだAccessやExcelの画面イメージが忠実に再現されているため、操作に戸惑うこともありません。結果として、導入後に迎えた2023年および2024年の年末調整もスムーズにこなすことができました」(千葉氏)
そして新システムで大きく強化されたのが、作業者ごとの残業時間の管理機能である。 「単に残業時間の合計値を表示するだけでなく、例えば『時間外労働が月45時間を超えられるのは年に6回まで』といった条件まで考慮したアラートも発してくれるため、気づかずに法令違反を起こしてしまう心配がなくなりました」(稲井氏)

労務管理の精緻化と業務効率化を目指したさらなるデジタル活用へ

システムマインズ株式会社
取締役
酒井 隆弥氏
世の中に数あるノーコードツールと異なり、「例えばSQLで記述したロジックも自由に組み込めるなど、柔軟な開発を行えるのがCELFのメリットです」と酒井氏は語り、「この特徴を最大限に生かすことで、秋津道路様のより複雑度の高い要望や課題解決にもしっかり応えていきます」と強調する。
「これまで別システムで管理していた正社員の作業日報についても、今回の新システムに統合するなど労務管理の一元化が進んでおり、その意味でもCELFを活用した機能拡張に対する期待が高まっています」と語るのは稲井氏だ。
さらに千葉氏も、「業務のデジタル化が進めば、建設業界の収益はもっと高まり、誰もが働きやすい職場になると思います」と続ける。
こうした前向きな意見を受けて渡辺氏も、「冬季の除排雪業務も行っている当社は、天候という予測不能なタイミングで作業者の工数が積み上がることもよくあるだけに、労務管理の精緻化と業務効率化を目指したさらなるデジタル活用が不可欠です」と今後を見据えている。引き続きシステムマインズとその背後に控えるSCSKと密にタッグを組みながら、冒頭で述べた現場作業と本社業務を両輪としたDXを推進していく考えだ。
企業情報
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舗装工事、土木工事、造園工事の設計施工請負、ロードヒーティング工事、道路清掃、除雪工事、建設機械類の賃貸修理、建設材料の販売、労働者派遣事業の業務