手作業や書き写しによる非効率な業務を改善
納品書のFAX自動送信を実現するシステムを構築

有限会社近藤酢店

業種: 製造業

対象部署: 業務部

対象業務: 顧客や取引先との窓口としての役割を担うバックエンド業務全般

手書き伝票の処理にヒューマンエラーや手戻りが数多く発生

有限会社近藤酢店 佐藤美和氏
有限会社近藤酢店
業務部 課長
佐藤 美和氏

静岡市で長年愛され続けている近藤酢店は、地域に根ざした老舗の食酢メーカーだ。1933年の創業当時から変わらない伝統の技術と製法を守りつつ、無添加にこだわった「安心·安全で、体にやさしい美味しい」酢造りを手がけている。

代表商品の「延命酢」は、地元静岡の温州みかんから造った果実酢と米酢をブレンドし、ハチミツや果糖ブドウ糖液糖、食塩を加えて調味した「甘くて、まろやか、やさしい味」の酢である。延命酢330mlは日本野菜ソムリエ協会様主催の「第15回調味料選手権2024」の酢部門にて最優秀賞を受賞するなど、全国に知名度を上げており、今なお愛され続けている。

そんな近藤酢店だが、伝統的な老舗企業にありがちな課題として、多くの業務が紙の書類を用いたアナログ作業で行われていた。
同社 業務部 課長の佐藤 美和氏は、「例えば受注伝票や請求書の処理には手書き伝票の起票が必要で、ヒューマンエラーや手戻りなどが多く発生していました」と語る。

有限会社近藤酢店 川崎悠里氏
有限会社近藤酢店
業務部
川崎 悠里氏

同社 業務部の川崎 悠里氏も、「当社には受注管理システムとして『商奉行』が導入されているのですが、紙の帳簿との間で何度も書き写しを行っているうち双方のデータが合わなくなり、どちらが『正』だったのか、わからなくなることもありました」と続ける。

さらに、世間では多くの企業がDXに向かっているにもかかわらず、そのトレンドに乗り切れていない状況に危機感を覚えていたという。
「高いデジタルスキルを身につけて入社してくる若い世代の従業員に対しても、その能力を存分に生かせる活躍の場を与えられておらず、このままでは若い従業員が会社に魅力を感じず、次世代を担う人材の育成にも影響がでることに危機感がありました」(佐藤氏)

DocuWorks+CELFで納品書のFAX自動送信を実現

有限会社近藤酢店 宇佐美徹氏
鈴与商事株式会社
DX営業部
デジタルソリューション営業課
宇佐美 徹氏

そこで同社は、複合機をはじめとするOA機器の導入で長年の付き合いのある地元ベンダーの鈴与商事に課題解決の相談を持ち掛けた。こうして両社の協働により始動したのが、納品書のFAX自動送信を実現するシステムの構築プロジェクトである。

「当社では1日あたり30~100枚の納品書をお客様に送付していますが、その都度会計システムの画面に表示された納品データを専用用紙に書き写して複合機まで持ち運び、手動で正しい宛先にFAX送信しなければなりません。万が一送付先を間違った場合、別のお客様に納品書が送られてしまい経営層を巻き込むレベルの大問題に発展するリスクがあるため、毎回業務を対応するたびにプレッシャーがかかります。また、お客様ごと部署ごとに伝票を送付するタイミングもばらばらで、仕掛中の仕事を何度も中断しなければなりませんでした。この時間をトータルすると、1日の就業時間のうちの1時間程度を費やす場合もあります。要するにこうした業務の無駄を抜本的に解消したいと考えました」(佐藤氏)

こうした要望を受けて鈴与商事が提案したのが、富士フイルムビジネスイノベーションが提供する文書管理システム「DocuWorks」と、SCSKのノーコード開発ツール「CELF」を組み合わせたソリューションである。

鈴与商事 DX営業部 デジタルソリューション営業課の宇佐美 徹氏は、「もともと当社は複合機を中心としたシステムを数多く提供してきた実績があり、DocuWorksについても豊富な知見を有しています。また、当社はSCSKの販売パートナーでもあり、CELFの製品特性を熟知しています。今回CELFを採用するにあって特に注目したのは、ユーザー画面のカスタマイズのしやすさと、製品に内蔵された優れたRPAです。このCELFとDocuWorksのそれぞれの強みを融合することで、近藤酢店様の課題解決に完全に合致するシステムを実現できると考えました」(宇佐美氏)

劇的な業務効率化とともに心理的なプレッシャーからも解放

鈴与商事が提案したのは、具体的には次のような動きをするシステムである。まずは商奉行から対象顧客向けの納品書データをダウンロードし、DocuWorks上で従来の専用用紙と同じ形式に加工する。もちろん定型文書もスタンプ機能により容易に入力可能だ。

さらに、このファイルをパソコンのFAX送信用フォルダにセットし、CELFで作ったアプリの送信ボタンをクリックすると、RPAが所定位置からFAX番号を自動的に取得し、直接FAX送信が行われる。なお、処理が完了した納品書はPDF化されて「処理済み」フォルダに保存され、後から確認できる履歴として残している。

そして実質約1ヶ月の期間をかけて開発され、2024年5月に稼働を開始した同システムによって、業務部における作業負担は大幅に軽減された。

「これまでのように納品書をFAX送信のたびに、納品書を専用用紙に印刷し、必要事項を手書きしたり、自席と複合機の間を何度も往復したりする必要がなくなり、一連の手続きを1台のパソコンの画面上で完結することができます。その日にFAX送信しなければならない納品書を退社間際の数分間でまとめて処理できるようになるなど、業務効率は大幅に向上しています。もちろんCELFのRPAの動作も非常に正確で、これまでFAXの送信漏れや宛先違いといったトラブルは発生していません」(川崎氏)

続けて佐藤氏は「業務効率化はもちろんのこと、納品書送付という“単純だが絶対にミスできない”というストレスから解放されたのも大きな導入効果だと考えています。これにより、宛先違いによる取引先との関係悪化リスクを回避するとともに、仕事のしやすさにつながりました」と強調する。

導入Before After

電帳法対応の電子請求書やEDIの導入を視野にさらなる電子化を目指す

今回構築した納品書のFAX自動送信システムについて、佐藤氏は「私たちからは『業務をこんな形に変えて合理化したい』といったアイデアを出すだけで、果たしてそれがどんな形で具現化されるのか、まったく想像できませんでしたが、鈴与商事によってDocuWorks+CELFをベースに構築されたシステムは、まさに私たちのニーズを120%満たしてくれるものでした」と高く評価する。

ただし、その一方で佐藤氏は、「取り組みは始まったばかりです」とも語る。今回実現したのは、あくまでも納品書に関する処理のみだからだ。顧客や取引先とやり取りする他の伝票の処理は依然として紙が用いられており、まだ手付かずに近い状態だ。

「できるだけ早期に電子帳簿保存法に対応した電子請求書システムを導入するほか、将来的には完全なEDI(電子データ交換)化を目指しています」と佐藤氏は語り、引き続き鈴与商事ならびにその後方に控えるSCSKとも緊密に連携しながら、今後の課題解決の在り方を共に模索していく考えである。

FAXとメール送信の自動化紹介動画

※ 鈴与商事株式会社様の動画です。

企業情報

企業名有限会社近藤酢店
業務内容
    静岡県静岡市葵区に本社を構える食酢メーカーで、マルヤスブランドの「延命酢(みかんのお酢)」や「美味しいぽんず」をはじめとする酢製品の製造・販売を行っている。同社は品質と安全性にこだわり、原料選定から製造工程まで一貫した管理を行いながら、すし酢や米酢、果実酢など幅広いラインアップを展開している。

導入事例