学生チームが学内職員の業務効率化に挑戦!
時間割共有・予算実績管理アプリ開発で
社会での実践力を向上

長崎大学

業種: 教育・学習支援業

対象部署: -

対象業務: 予算実績管理、時間割共有

学生主体でCELFを使った学内業務改善にチャレンジ

長崎大学 北村 史氏
長崎大学 助教
北村 史氏

人手不足が叫ばれる地域社会において、高等教育機関には即戦力となるIT人材の育成が求められている。特に情報科学分野では、知識だけでなく実践的なスキルを持った人材のニーズが高まっている。そうしたなかで長崎大学は2020年に「情報データ科学部」を新設した。長崎大学は実践主義を教育理念の一つとして掲げており、学生に早い段階から社会を経験させる教育を取り入れている。情報データ科学部は約9,000人の学生が在籍する10学部の中でも、特に実社会との接点を重視したカリキュラムを設けている。

情報データ科学部を設立した目的は、「真に実社会に具体的な価値をもたらす人財を育成する」ためだ。そのためには、「ICT技術を駆使してアイデアをカタチにする情報科学(IS)」と「データから新たなアイデアを生み出すデータ科学(DS)」を融合させた「情報データ科学」の教育研究が必要と考えられている。

注目すべきは、学部設立当初から必修科目として設定された「実社会課題解決プロジェクト(Project Based Learning、以下PBL)」だ。PBLは1、2年生の必修科目として設定されており、自治体や地元企業と連携して課題を発見し、解決することを目指している。今回、PBLのテーマの1つとして「CELFを用いた学内職員の業務改善」が設定された。学生自身が学内業務の課題を見つけ出し、ノーコード開発ツール「CELF」を活用して解決策を提案・実装する内容となっている。

学務・生協の担当者向けに業務改善アプリを開発

PBLでは1年生から2チームが、CELFでアプリを開発することになった。なお、取り組みにあたってはSCSKニアショアシステムズ株式会社の長崎開発センターとSCSK株式会社のCELF製品チームのメンバーが伴走しながら課題解決を支援した。

まず、一つ目のチームが取り組んだのは、「時間割共有アプリ」の開発だ。学務担当者へのヒアリングから「あらかじめ割り当てられた教室以外の場所を使いたい」という依頼があった際、どの教室が使えるのか調べて割り当てることに手間や時間がかかるという課題が明らかになった。そこで、CELFで時間割情報を一元管理して空き教室が一目で分かるアプリの開発を目指した。

二つ目のチームは「予算実績管理アプリ」の開発にチャレンジした。生協担当者は、いくつかの部署の予算実績管理をExcelファイルの授受や転記で行っているため、非効率となっていた。そこで、アプリ上で管理をすべて完結できるツールの開発を目指した。

両チームとも、ヒアリングから始め、課題抽出、解決策の整理を経て、Excelライクのアプリ画面の作成まで進めることができた。ただIT技術を学ぶだけでなく、業務担当者とのコミュニケーションを通じて課題の本質を理解し、それを解決するためのソリューションを模索するという、実社会で求められるスキルを学ぶ機会となった。

成果をポスター形式でプレゼンする様子

実業務に通用するレベルで課題発見や解決能力を養成

CELFを用いたアプリ開発を経て、学生チームからは「CELFはExcelをそのまま読み込めるため、普段Excelを使用している人でもなじみやすかったです」との感想があった。また予算実績管理アプリについては、「今までは複数部署からメールでExcelファイルを授受したのちに手作業で転記していましたが、各担当がCELFに直接入力できるようになったため、メールでのやり取りがなくなり、時間短縮につながりました」という声が上がっている。CELFの使い勝手については、「専門知識がなくてもノーコードでアプリ作成できることを実感できました。まさにCELFはITスキルが不足しがちな現代社会に適しているツールだと思いました」といった評価も見られた。

また、今回のCELFを用いた学内職員の業務改善への取り組みを通じて、メンバー同士のコミュニケーションや役割分担の重要性を体感できたという。学生たちからは「与えられたタスクを分業していくプロセスが難しく、学びになりました」「役割分担がうまくできて、各々の役割を果たせていました」といった声が上がり、チーム一丸となって実際のプロジェクトに取り組む経験を得られたことがうかがえる。

さらに、業務担当者に対してヒアリングすることで、課題発見能力も養われた。「学務へアンケートの協力をお願いし、実際にヒアリングすることで課題の概要を明らかにすることができました」との感想からも、現場のニーズを把握する重要性を学んだことが分かる。このような経験は、教室内の講義だけでは得られない貴重なものである。

企業との連携も、学生たちに新たな視点をもたらした。「企業の方々と活動するのはとても刺激的で良い経験でした」「実務担当者や依頼主(ここでは学務担当者)とのやり取り、作法、伝え方についてとても考えたことが良い経験で、身になりました」という声も上がり、クライアントとのコミュニケーションについても学びを得たことが読み取れる。

このことからもCELFはPBLの目的である「教科書だけの学習にとどまらず、社会で求められる実践的なスキルを身に付ける学び」にツールという側面から貢献したと言えよう。

産学連携を強化し、地域社会を支えるIT人材を育成

PBLの指導を担当した北村 史助教は、「学生は業務の効率化にあまり馴染みがないため、学務や生協の方々がどのような業務を行い、どのような課題を抱えているのか理解することが最も難しかったようです」と述べている。また「本人たちが知らない業務について、ヒアリングを通じてどれだけ理解を深め、具体的なイメージを持てるかが課題で、実社会でも課題になることを体験させることもできました」と評価した。

北村助教は今後の展望として、「アウトプット(成果物)のレベルを向上させること」を挙げた。「そのためには、テーマ設定における事業会社との丁寧な連携や、伴走支援が欠かせません。また、学生のモチベーションを高めるために、やりがいや楽しさを感じられる取り組みを提供するだけでなく、使用するツールや手法について十分に理解する時間を確保する必要もあります」(北村氏)

主にCELFは、Excelをベースに業務を進める企業や組織から支持されるノーコード開発ツールであるが、今回のPBLの取り組みを通じてITの専門家ではない学生でも使えることがわかった。

今後も長崎大学 情報データ科学部は、CELFが持つExcelライクの扱いやすさと業務改善のポテンシャルを活かすことで、同学部が目指す実社会で活躍できる人財の育成を加速させていくことだろう。

学内業務課題解決に取り組んだ学生たち

企業情報

企業名長崎大学
業務内容
    長崎奉行所西役所で行われた医学伝習を創基とする、日本最古の医学部を前身とした総合大学。「グローバルヘルス」「グローバルエコロジー」「グローバルリスク」への貢献を目指す世界的な教育研究拠点であり、10学部と7研究科、1学環を有している。

導入事例